私は歌ってないのだが
「ウェディング・シンガー」の歌稽古が始まった。
例によって、
稽古場では、
私には別に何の仕事もないが、
でも、行く。
歌稽古っていったら、
ミュージカルじゃない普通の芝居で言えば、
読み合わせのようなもんじゃないか。
読み合わせは、台詞書いたものとしては、
行く義務がある。
自分じゃ、
「この台詞はすげえ!!
私って天才じゃないの!?」
と思って書いたとしても、
実際に、俳優さんの口に乗ると全然駄目な台詞だった・・・
ということが、よくよくよく、ある。
俳優さんのキャラクターに合わないとか、
文字で読むならいいが、喋る言葉じゃなかったとか、
さらには、
書いている時は気づかなかったが、
「あ、この芝居の流れでは、この台詞はあきらかに間違っている!」
と、私が間違えていたことに、
俳優さんが、台詞を言ってくださった途端に気づくことがある。
歌稽古も、
「これ、歌詞として歌って大丈夫なんだろうか。
きちんと意味が伝わるんだろうか。
芝居の流れから見てみると、
言葉が間違ってたんじゃないだろうか・・・」
とかとか、
つまりは、私がやっちまったことは、
「大丈夫なのか!?」
ってことを、
現場で、聞いて確認しなくちゃならないから、
邪魔でも、行きます。
で、聞いてます。
どんな芝居やっても、
一番最初の読み合わせっていのは、
私は、もう、逃げて帰りたいくらい緊張します。
「台詞として大丈夫なのか。
芝居として大丈夫なのか」
は、勿論だが、
「キャストやスタッフの皆さんは、
なんでこんなつまんねえ台詞なんだよ!!
これじゃ、面白い芝居になるわけねえんだよ!!」
と思っておられるのではないか・・・
いや、確実に思っている・・・
すみません!!
今から、即、全部、書き直してきます!!
とか思って、
不安のあまり、
吐きそうになる。
ほんと、最初の読み合わせは、
何度やっても、
ものすげえ不安だ。
で、歌稽古だが、
当然だが、
まず、発声練習から始まった。
ここでまず私は吐きそうになりました。
いや、発声練習ですからね、
歌詞も何もまだ関係ないんですけど。
これは、歌詞書いたとか、
そーゆーことはまったく関係ない。
私は、中学の時、
間違って、
コーラス部に入ってしまった。
なんでかというと、
女子校だったので、
放課後とかに、
美しい女声コーラスが聞こえてきたりするんだろうなあ・・・
それは、優雅だし、素敵だなあ・・・
私が、それ歌ってるコーラス部員になりたいなあ・・・
という、
ただの、完全な妄想なイメージだけで、
入ってしまった。
けど、入ったら、
コーラス部って、
ほとんど体育会系だった。
発声練習のせいだ。
放課後の部活でも、
30分くらいは、
まず発声練習をする。
当たり前だ。
が、それまで、歌うための発声練習なんか、
したことなかったので、
まずは、
「とにかく、発声は複式呼吸!」
ってのをやったことがなかった。
新入生で入ったばっかの頃は、
先輩に、発声練習の間、
ずっと、腹押さえられて、
「腹式じゃない!!
ちゃんと、お腹でブレスして!!」
と怒鳴られる。
発声練習だけで、
腹筋がめちゃめちゃ痛くなる。
これが夏休みの部活になると、
二時間くらい発声練習をやる。
これは地獄だ。
スタッカートの発声練習とか、
「全部、腹で切れ!」
と言われるので、
音の数だけ、
腹筋動かないと、
怒鳴られる。
でもって、どんどん、テンポが早くなる。
声出すだけでもついてけないくらい早くなるのに、
全部、腹筋で切るなんて、
もう、できるわけがない。
でも、腹筋動いてないと、
怒鳴られる。
30分で腹筋が痛くなり、
1時間で胃が痛くなり、
1時間半で吐き気がしてくる。
2時間近くなると、意識がなくなりそうになる。
実際、胃痙攣を起こしそうになって、
胃が痛くなって気持ち悪くなって、
倒れた。
「何やってるの!?」
と先輩に怒鳴られ、
消え入りそうな声で、
勇気を振り絞って、
「・・・・気持ちが悪いので、ちょっと休ませてください」
と訴えたら、
そこは、
体育会系よりはまだ厳しくなかったので、
「仕方ないわね。
ちょっとだけ、休憩しなさい。
そんなんじゃ、腹筋が弱すぎて歌えないからね!!」
と、怒鳴られはしたけど、
休ませてもらえた。
音楽室から、トイレに直行だ。
そのまま、30分は、トイレから動けなかったけど。
トイレの中で思った。
「全然、優雅じゃない・・・
完全に、体育会系だ・・・」
憧れだけで、コーラス部に入ったのを、
ほんと後悔した。
で、現在の「ウエディング・シンガー」の
稽古場に戻るが、
歌唱指導の北川先生が、
発声練習のために、
ピアノを弾き始めた。
その音聞いた途端に、
部活の、
地獄の二時間発声練習の恐怖が蘇ってきた。
勿論、私は、発声練習しなくていいんだけど、
腹筋に痛みが走った。
最初の歌稽古で、
緊張で吐きそうな上に、
「部活の地獄の発声練習の記憶が蘇った」のせいで、
二重に吐きそうだ。
ここで私が吐いたら、
夜中の電車で、
酔っ払って吐いた人以上に、
大迷惑だ。
ていうか、
他の皆様には、
「なんで、飯島、吐いてるんだろう」と、
意味が判らないだろう。
死ぬ気で我慢した。
何もしてないのに、
死ぬ気で腹筋キープしている私は、
何なのだ。
自分でも意味が判らない。
発声練習が終わったら、
ようやく、
自分が取り戻せて、
何とか歌聴いていられる体勢ができるようになった。
まずは、
ウォール街のバリバリエリートのグレン役の、
大澄賢也さんの、
「ウォール街で桁違いのデカイ金動かして、
信じられないくらい稼いでるんだぜ、俺」
な歌だ。
そんな歌か・・・?
まあ、そんな歌です。
簡単に言うと。
金融用語が、
しかも、1985年の話なので、
ちょい古い金融用語が連発だ。
「僕は、あなたを愛している」
とかって歌詞を、
歌いあげるわけじゃないので、
大澄さんも、金融用語には、
多少とまどっておられる。
「ナスダック」って歌詞に、
どーやって感情をこめればいいのか、
だよな、そりゃ。
けど、歌ってるうちに、
バリバリのウォール街エリートな顔になってきてるから、
さすがだ。
当たり前だが。
でもって、次は、
上原多香子さんの歌稽古だ。
初めてお目にかかったけど、
・・・・可愛い・・・・
・・・・すげえ、可愛い・・・
・・・・声も可愛い・・・・
・・・・歌うともっと可愛い・・・・
ボーっとして、
見惚れて、
聞き惚れてただけでした。
何しに稽古場に行ったのだ。
えーと、見惚れて、
聞き惚れてました。
終わり。
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