馬鹿で猿である
14時から打ち合わせが一本あって、
19時から、
もう一本打ち合わせがあった。
一本目の打ち合わせの時点で、
脳みそのしわが一本残らず消えていた。
つるっつるです。
脳みそが。
脳としての形態をなしてないが、
脳としての機能も何も残ってない。
自分のあまりの無能さ加減に、
吐きそうになり、
ついでに胃が痛い。
これでは、2本目の打ち合わせに行っても、
あきらかに、ひとかけらも、
アイデアは出ません・・・
と、思いながら、
遅れ気味だったので、
新橋駅から汐留方向への地下道を走る。
走ったら、
最後のエネルギーまでもが尽きた。
ガス欠っていうか、
ガスなし。
これではさっぱり働けない人だ。
打ち合わせに来た意味がない。
ただ、いるだけの人である。
まるで駄目じゃん。
完全脳死してたら、
高速エレベーターに乗せられた。
耳が詰まった。
耳抜きはした。
耳抜きができる程度の能力と判断力は、
残っているらしい。
しかし、
それができたからと言って、
何だというのだ。
生きているというだけだ。
仕事はできない。
エレベーターのドアが開いたら、
46階だか47階だかだった。
おおおおおおおおぉぉぉっ!!
すっげえ景色だぁ!!!!!
19時だから、もう夜景だ。
レインボーブリッジは見える。
フジテレビは見える。
観覧車も見える。
ゆりかもめも見える。
隅田川に屋形船は走っている。
朝日新聞と築地市場が足元に見える。
いろんな高いビルがにょきにょきしてる。
それがぜ~んぶイルミネーションですよ!!!
すっげえすっげえすっげえすっげえぞおおおおぉぉぉ!!!
隅田川から東京湾、
千葉方面にかけて、
果てしない夜景が広がってるですよおおおおおおぉぉぉぉ!!!!
いきなり脳が沸騰する。
脳細胞が活性化して、
脳のしわが復活する。
・・・ような気のせいがする。
高いところに来たというだけで。
ただ、高度が高いというだけで、だ。
馬鹿で猿である。
役に立つかもしれないかもしれないアイデアも、
役に立ちそうにもないアイデアも、
どーでもいいアイデアも、
何の関係もないアイデアも、
どっちかってば無駄なアイデアも、
完全に無駄でしかないアイデアも、
今そんなこと思いついている場合じゃねーよなアイデアも、
あきらかに邪魔なアイデアも、
思いついていくではないか。
ああ、
馬鹿で猿でよかった・・・
高いところに来たってだけで、
エンストでガス欠だった頭が動き出した。
なんて簡単で、
安い頭なんだ。
でも、簡単で安い頭でよかった・・・
とりあえず、
役に立ちそうだと思われる考えを選んで、
喋るように努力はしてみて、
仕事してる風に見せてみるが、
窓から花火が上がるのが見えたら、
なんか話している途中だったが、
思わず、
「あー花火だー!」
と叫んでしまう。
見たまんまだ。
見たものを見たまま、
何の飾り気もなしに、
報告しているだけだ。
これでは、打ち合わせではない。
「あっちは、ディズニーランドだぁーっ!!
ディズニーランドの花火だぁーっ!!!!」
打ち合わせしている人全員がそう思っている。
もはや、
私は、
打ち合わせをしてる人ではまったくない。
見たものと頭に浮かんだものを、
ただそのまんま、
口に出して言う人と化している。
馬鹿と猿もたいがいにしろ、である。
打ち合わせ的なアイデアも、
喋ることは喋っている気もするが、
何の関係もない、
どーでもいい無駄話が、
口から出ることの、
八割五分をしめている。
「そういえば、
今突然思い出したんですが、
高校の時の体育の先生に、
一先生という先生がいたんですけど、
苗字が一っていう先生なんですけど、
北京オリンピックの開会式だったら、
一番に入場してくる苗字ですよね」
と言ったら、
同じく脚本家である、いしかわさんが、
「その人は、
人であって、
国じゃないから、
北京オリンピックの開会式には、
一番に入場はしてこないと思う」
と、
コメントしてくださった。
正論である。
そして、
その話は、
打ち合わせとは何の関係もない。
むしろ、
邪魔な話だ。
結局、4時間打ち合わせしてた。
ただ、高度が高いというだけで、
4時間、
煙草吸わないで、
打ち合わせができた。
・・・できたような気がする。
馬鹿で猿で、
簡単で安い頭で、
本当に良かったぞ、私。
ま、
考えと喋ってることの、
九割八分までは、
どーでもいい無駄話だったが。
そこは、まあ、
馬鹿で猿なのだから、
仕方がない。
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